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Colorful! 100色こうち旅

タイトル

珈琲店のオーナーに会いにいく

 2回目の高知への旅にはいくつか理由がありました。小さいほうから言うと、「はなればなれ珈琲」という珈琲焙煎所の珈琲が飲んでみたかったこと。それから、「オーガニックマーケット」に行きたいという気持ちでした。
 高知県は「市」の文化で知られていて、毎日どこかで市が立ちます。その中でもこの土曜日にだけ開催されるオーガニックマーケットは、全国を旅している僕の勘が、絶対に行くべきだと伝えていました。

 その不思議な名前の珈琲焙煎所は、オーガニックマーケットにも出店しています。そこに行けば必然的にそのコーヒーが飲めると思い、土曜日をからめた旅の予定を組むことから今回の旅は始まりました。
 結果的に僕は、オーガニックマーケットでは、はなればなれ珈琲には会えませんでした。でも実はその前日の金曜日に、僕は焙煎所を訪ねていました。その不思議な名前の珈琲が生まれる場所を、どうしてもこの目で見たかったのです。自身の屋号にこんな素敵な名前をつけられる人の淹れる珈琲に、とても興味があったのです。

 夕暮れの町を地図を頼りに歩いていると、道の向こうからほのかに珈琲のいい匂いがしていました。その匂いを辿っていくと、そこには小さな作業場があり、オーナーが黙々と豆を焙煎していました。
僕はじっと外からその様子を見ていました。
「この豆でアイスコーヒーを試しているんです。まだまだ難しくて。味見してみますか?」
 そう言ってオーナーが手渡してくれたアイスコーヒーの味が忘れられません。
 はなればなれ珈琲、名前の由来を聞くのは野暮ですね。すべてを知ることだけが、良いこととは限りませんから。ちなみに、高知は県民一人あたりの喫茶店の数が、全国で1位だそうです。

建物のない美術館への再訪

 大きいほうの理由は、高知市から2時間ほど西、黒潮町の「砂浜美術館」で開催されている「Tシャツアート展」を見ることでした。昨年の夏にここを訪れた時にその存在を知り、今年はオズマガジンとして読者と一緒にそのアートイベントに参加させてもらいました。

 高速道路をレンタカーで走っていると、高知県の自然の強さに気づかされます。緑の濃さが、僕らの暮らしている場所とは全然違うのです。それは生きる強さのようなものを全身から放っていました。生命力みなぎるとでも言いましょうか。その深い緑を抜けると車は海へ出て、海岸線を走ります。高知市内から1時間と少し。その先にあるのが、砂浜美術館です。
 建物のない美術館。
 最初の訪問の時にその考え方に共感し、学芸員の西村さんにお話を伺った時から、再訪は自分の中では決まっていたように思います。この場所に、思いに、強く惹かれていたのです。

 砂浜にTシャツがはためくさまは、いままで見たどんなアートインスタレーションとも違っていました。それはアーティストが生んだものではなく、ひとりの普通の人の思いが、Tシャツの数だけ集まって、ただただ風に揺れていました。
 安っぽい言葉になってしまいますが、その光景は圧倒的でした。それはわたしたち人の、つながりを表現しているように見えました。一人ひとりは、全員違う。でもみんなで同じ風に吹かれている。それは世界のメタファーのように僕には見えました。
 わたしたちは一人じゃない。風にはためくTシャツたちは、そう言っているようでした。同時に、その心強さの中に内包されている、人の儚ささえも、このTシャツたちは表現しているように思えたのは、僕の考えすぎでしょうか。

 旅をすればするほど、また来たくなる場所というのが、いくつかあります。高知県は、まさにそんな場所です。大好きなカツオのタタキをはじめとする食文化の豊かさ、温暖な気候、人の暖かさ…列挙してもしきれない魅力がそこにはあります。百聞は一見にとはよく言ったものです。
 次の高知への旅は、8月のよさこい祭りのタイミングの予定です。
 それから素晴らしかったカフェterzo tempo再訪。
 旅の理由は、小さいほうへ、小さいほうへ。 文/写真 ふるかわ・まこと
スターツ出版「OZ magazine」編集長
1998年スターツ出版に入社、2008年から編集長に就任。
「日常を丁寧に」をコンセプトにした雑誌づくりで首都圏の
女性から支持を集める

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