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Colorful! 100色こうち旅

タイトル
柚子、生姜、フルーツトマト、キリンサイ・・・高知の食にあいに行く!
 鰹をはじめ、四方竹、ツガニ、鯖、鮎……と、四季を通じておいしいものがたくさんある高知。これからの季節、旬を迎えるのは冬の椀物に欠かせない柚子や、ほっこりと身体を温めてくれる生姜、見た目もラブリーなフルーツトマト。高知を代表する食材をつくる素敵な生産者と、それを支える人々を訪ねました。
人口千人、森林率96%の馬路村
 金色に熟した実の付け根をねらって、高枝ハサミでぱっちんと切る。コロンと落ちてきた柚子はちょうど片手に収まるくらいの大きさ。「トゲが刺さるき、気ぃつけちょきよぉ」。柚子畑の持ち主で、馬路温泉心配人(支配人ではない……念のため)の林義人さんに心配される。するどいトゲをよけつつ、高知では各家庭に必ずあるという柚子搾り機で果汁を搾ったら、辺り一面爽やかな香りに包まれた。
 高知県馬路村は、高知市内から東へ約1時間20分、さらに安田川に沿って山道を上ること30分の山あいにある。人口は約千人。村の総面積の約96%が森林という、けっして便利とは言えないこの地で、馬路村は独自のスタンスを貫く村として輝いている。そう、この村の中心には、柚子があるのだ。
小さな村の大きな産業
 村では昔から柚子の酢(搾った果汁)を「いの酢」と呼び、柚子寿司を作ったり、ぽん酢にしたりと1年中食卓で使ってきた。「柚子の木は村のどの家にも必ずあって、勝手に実が成るもの」(林心配人)だったそう。  これが変化するのは昭和40(1965)年代。衰退する林業の代わりに、馬路村農業協同組合が柚子栽培をはじめ、柚子の集荷場や加工品づくりに着手した。除草剤や化学肥料を使わず、自然のままの柚子を使った商品は、当時では珍しい生産者からの“お取り寄せ”で届くシステムと共に大ヒット。柚子の味わいはもちろん、商品ラベルの温かみのある文字やイラスト、村の人々が出演するCMや販促物が人気を後押しした。
「大手メーカーと同じ土俵に乗ったら負けるのは分かりきっちゅう。それやき“馬路村”という村を一緒に売ることにしたがよ」と農協組合長の東谷望史さんは言う。“村を売る”、その言葉どおり、顧客に送るパンフレットやカレンダーには、商品名を冠した「ごっくん坊や」と呼ばれる子どもたちの笑顔がはじけ、村の行事が紹介されている。見ていると物欲だけでなく、旅心もくすぐられる。  いまや、馬路村農協は全国に数十万人の顧客を抱え、加工場では約90人が働く。商品から馬路村ファンになり、村を訪れる観光客も後を絶たない。柚子は、小さな村の大きな産業となった。
ゆず工場を見学し、温泉につかる
 そんな馬路村の柚子物語を体験できるのが、平成17(2005)年にできた新加工場「ゆずの森」。馬路村公認飲料「ごっくん馬路村」製造ラインのほか、荷造り場やギャラリーが見学できる。
 一般的に工場といって想像する建物とはまったく違い、木のぬくもりと陽ざしの暖かさが感じられるスポットだ。敷地内のゆずの森直売所では、ゆずの有効成分を贅沢に配合した人気の化粧品も買える。
 熱い馬路村のストーリーに興奮したあとは、心配人・林さんのいる馬路温泉へ。20代で支配人になった林さんは、「支配する人」は自分にはしっくり来ない、と考え「心を配る人」と書いて「しはいにん」を名乗っている。弱アルカリ性のとろとろっとしたお湯は、美肌効果もばっちり。
 柚子の収穫を手伝い、馬路村の歴史を学び、温泉に浸かったら、ちょっとだけ馬路村民になれた気がした。

ゆずの森 営/8:30〜17:00 休/無休 電話/0887-44-2323 URL/http://www.yuzu.or.jp/
コミュニティセンターうまじ 馬路温泉 営/10:00〜21:00 入浴料/中学生以上600円、 小学生300円
電話/0887-44-2026 URL/http://www.umaj.gr.jp/ 

名シェフが作る土佐市の新名物“キリンサイ”
 「高知にはまっことうまいもんがどっさりあるき、こじゃんと旬の食材をメニューに入れないかんぜよ」。
 土佐市高岡町のレストラン&カフェ「ボヌール」の島田和幸シェフはこう話す。国が卓越した技能者を表彰する「現代の名工」に、四国初の西洋料理人として選ばれた島田シェフならではの言葉だ。  高齢者がむせないように水をジュレにしたり、自らが山で摘んだ山草から健康に良いと言われている酵素を抽出したり。さまざまな食の取り組みをしている島田シェフが「これから土佐の名物としてPRしていきたい」と見せてくれた食材が「キリンサイ」。もともと熱帯のサンゴ礁に自生している海藻で、「水のきれいな仁淀川の河口がキリンサイの育つのにしょうええがよ」(島田シェフ)と言う。
 愛媛県の石鎚山を源流に、高知県内の6市町を経由して太平洋に流れこむ仁淀川は、四万十川と並ぶ名河川。全国トップクラスの透明度で知られ、土佐市はその河口に位置する。
 仁淀川が育んだキリンサイをちぎり、ひと口食べるとコリコリとした食感。淡泊な味わいながら、少しぬめりがあって面白い。
「人は食べ物によって作られゆうき、料理人はいつも気を付けとかないかんがよ」と話す島田シェフがキリンサイをどう料理していくのか、再訪が楽しみだ。

レストラン&カフェ「ボヌール」 営/ランチ11:30〜14:00 ディナー17:00〜20:00 L.O.  休/火曜 
電話/088-852-4393 URL/http://www.grandir.tv/

この人の野菜だから食べたい。
 「ボヌール」から歩いてすぐの住宅地に、トマト専業農園「ファーム輝」はある。運営するのは、麻岡哲也・真理さん夫婦。1998年から、この地で糖度9〜16度のフルーツトマトを栽培する。現在栽培しているトマトは30種以上。定番の赤やピンク、黄色のトマトだけでなく、緑や紫色など珍しい品種も育てている。実は高知県は、フルーツトマト発祥の地なのだそう。
 両親の畑を継ぐ形でUターン就農した哲也さんは、「現状維持は後退と同じがやき。毎シーズン、まっこと新しいことに挑戦していきたいがです」と話す。毎日Facebookを使って、農園での仕事の様子や農家の日常生活を発信。夫婦ふたりの「友だち」の数は計6000人を超える。そんなファーム輝のシンボルは、かぶりものの「とまっくま」。農園を訪ねた客とは必ず「とまっくま」をかぶって記念撮影する。
 同様にFacebookなどを使って情報発信するのが、いの町枝川の専業農家「高知水田農園」の水田かおりさん。水田農園では、高知県が誇る生産量日本一の生姜をはじめ、サツマイモやサトイモなど根菜を中心に季節の野菜を栽培している。
 「ショウガは大きくて、こぶに張りがあり、表面がキレイで重みがあるものがえいがですよ」と選び方を説明してくれた水田さん。毎週金曜日に高知市内で行われる金曜市では、コリンキーや「まっちゃんカボチャ」などの珍しい野菜の販売に力を入れたり、カラフルな野菜の花や実をディスプレイしたりと、PRにひと工夫する。
 魅力的な農作物は日本中にある。そんななかでも、この人がつくった野菜を食べたい、この人の畑が見てみたい、という魅力的な生産者が、高知には大勢いるのだ。

ファーム輝 URL/http://kagayaki.nouka.tv/
高知水田農園 URL/https://www.facebook.com/mizutanouen.market

高知の食材にはパワーがある!
 この旅を通じて、高知の素敵な食材をつくり、守っている人たちにたくさん出会うことができました。
 そこで、まだ高知を訪れたことがない東京の人に向けて、馬路村の柚子や仁淀川と土佐の大地が育んだ農作物の素晴らしさを伝えたいと思い、昨年12月に3日間、東京・代々木上原で飲食イベントを開きました。
 柚子や生姜、フルーツトマトはもちろん高知から送っていただいたもの。
 来場者からは「生姜の花、はじめてみた」「トマトってこんなにいろんな色があるんだ」「柚子、いい香り」などと、たくさんの言葉が飛び交っていました。
 改めて、確信。高知の食には人を惹きつけるパワーがあります!!

文/写真 本間 朋子(ほんま ともこ)

食と旅のライター。
埼玉県出身。新聞社勤務を経て2009年4月からフリーランス。
「食」をキーワードとした地域の活性化を目指して活動する。調理師、日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート。

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