牧野博士の業績を顕彰する総合植物園
「日本の植物分類学の父」牧野富太郎博士(1862-1957)の業績を顕彰するため、牧野博士逝去の翌年1958年4月に高知市の五台山に牧野植物園が開園しました。
「植物園を造るなら五台山がええ」と牧野博士が生前に候補地として提案した場所へ建設されました。
園内では、四季折々約3000種類以上の草花をはじめ、温室の熱帯花木や、土佐寒蘭センターではカンランならびに日本伝統園芸植物など多種多様な植物に出合うことができます。
牧野富太郎記念館 展示館では、牧野博士が描いた植物図や収集した蔵書、写真などから、その生涯や業績を知ることができます。
牧野博士のふるさと・佐川町
生家跡地に建つ資料館「牧野富太郎ふるさと館」や、博士ゆかりの植物が楽しめる「牧野公園」、直筆の手紙や植物図などを所蔵する「青山文庫」、「酒蔵のまちなみ」など散策が楽しめます。
牧野博士の生まれ故郷。生家の裏山にある金峰神社周辺では2月頃に、牧野博士が幼少期に親しみ、晩年は故郷を思い起こさせた植物バイカオウレンを見ることができます。 また、桜を愛した牧野博士は、当時高知になかった‘染井吉野’の苗木を東京から佐川町に送りました。この苗をきっかけにたくさんの桜が植えられ、名所として賑わいました。 戦争によって一度は失われましたが、その後、地元の方の尽力で桜を復活させ「牧野公園」となり、牧野博士の分骨もおこなわれました。今も高知を代表する桜の名所であり、 地域の方々が育てた山野草が見られるお花スポットとしても注目されています。
牧野博士の研究フィールド
アカガシの原生林や多くの希少植物が残る、植物の宝庫・横倉山。隣接する佐川町出身だった若き日の牧野博士もこの山に魅せられ、足繁く通いました。
ジョウロウホトトギスを発見してロシアのマキシモヴィッチ博士が学名を、牧野博士が和名を命名したことは有名な話です。
その後も、牧野博士はヨコグラツクバネをはじめこの山で採集した標本を基に多くの植物を新種として発表しました。横倉宮の横には、牧野博士が新種記載のためのタイプ標本を採集したヨコグラノキが今も現存しています。
植物調査に訪れた伊尾木洞
波の浸食によりできた洞窟で、高さ5mもある岩壁には貝の化石が見られます。
ホウビシダ・ホウライシダ・シロヤマゼンマイ等の暖地性シダ植物7種が壁面を覆っており、これらが一ヶ所に生えていることが珍しいため国の天然記念物に指定されていて、
周辺では約50種ものシダ植物が見られます。牧野博士もこの地を訪れ、シダ植物を採集しています。
植物調査に訪れた室戸岬
牧野博士は室戸岬周辺で、植物採集や観察会を行いました。この一帯にはアコウをはじめ、シオギクや牧野博士が学名を命名したハマアザミなどが見られ、これらの亜熱帯性樹林および海岸植物群落は国の天然記念物に指定されています。
牧野博士は著書のなかで、「誰か一山をこの珍樹のアコウ林にして(中略)海南の地に一等の珍名所を造る珍勇者は土佐にはないかな」と残しています。
植物調査に訪れた魚梁瀬
“高知県の県木”である銘木「魚梁瀬杉」。魚梁瀬地区を中心に自生しているスギの通称です。樹高50mに達する大木が群れをなす千本山は壮観で、日本三大美林の一つとされています。
千本橋の大スギは樹齢300年ともいわれ、植物採集や指導のため訪れた牧野博士もきっとここで目にしたことでしょう。牧野博士も乗った、森林鉄道の遺構も見逃せません。
植物調査に訪れた桂浜
月の名所として名高い高知を代表する景勝地の桂浜。牧野博士も植物採集に訪れています。
牧野博士が好きだったアコウや、ハマヒルガオ、ノジギク等、採集会での観察の記録が残っている植物があります。
海辺の植物を観察しながら、史跡や観光スポットを巡ってみませんか。桂浜から坂本龍馬記念館へと続く遊歩道「椿の小径」を観光ガイドと一緒に散策するガイドプランもおすすめです!
幾度となく通い多くの新種を発表した場所
「仁淀ブルー」で有名な仁淀川の上流部に、ヤマトグサ発見の地である名野川を有しています。
ここは、牧野博士が幾度となく通い多くの新種を発表した場所。四国カルストの東端に位置する黒滝山ではクロタキカズラが、鳥形山ではトリガタハンショウヅルが牧野博士によって新種として発表され、山の名を冠した和名がつけられました。
若き牧野博士を育んだ、まさに植物の宝庫といえる場所です。
植物調査に訪れた四万十町
牧野博士が県西部への長期遠征旅行の折に宿泊したとされる施設が残っています。
(四万十町仁井田・朝霧旅館)町内には手つかずの自然、植物の自生地が残り、それらを守ろうと地元の方々による地道な保護活動や観察ツアーが行われています。
牧野博士が学名を発表した「キイレツチトリモチ」は四国では初めての発見地であり、町の天然記念物に指定されています。
植物調査に訪れた三原村
若き日の牧野博士は三原村を訪れ、今ノ山で採集した標本などを基に現在は絶滅危惧種となっているトサムラサキを新種として発表しました。
牧野博士が植物図にも描いた絶滅危惧種ヒメノボタンの数少ない自生地を守ろうと、地元の方々による保全活動が実を結び、9月頃には星ヶ丘公園(ヒメノボタンの里)で種子から育てた可憐なヒメノボタンの群生を見ることができます。
植物調査に訪れた大月町
若き日の牧野博士は大月町を訪れ、ソナレノギク等を新種として発表しています。牧野博士生誕150年に、牧野博士がかつて足摺で見たという幻の"足摺桜"を探そうと、地元の人々がそれらしき白い花を咲かせるヤマザクラを見出しました。
この桜は、満月になると満開になるという言い伝えから月光桜と呼ばれ、3月下旬頃のライトアップでは、幻想的な姿を目にすることができます。
植物調査に訪れた足摺岬
二十代の牧野博士は、1ヶ月かけてこの一帯の植物を調査してまわり、非常に多くの植物知識を得たといいます。
壮年期、東京にいる牧野博士のもとに、この辺りで採集された奇妙な植物の標本が届けられました。研究の結果、牧野博士は日本初となる新科と新属を立ちあげて、新種の寄生植物ヤッコソウを発表しました。記載論文には、精巧な牧野式植物図が添えられています。