上岡沈下橋

上岡沈下橋(向山橋)

沈下橋とは、川が増水した際、流水の中に沈むことを想定して造られた橋。欄干のない独特の設計は“沈下”した時、水の抵抗を極力小さくするため。四万十川のシンボル的な存在で、本・支流に計47橋が残っている。

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 四万十川を間近に眺めながら、国道381号をのんびり走ります。途中、ゆるやかな曲線が美しい上岡沈下橋(向山橋)を眼下に望むなど、風景を楽しみながらドライブ。四万十町中央ICから30分足らずで、山あいの商店街に着きました。旧大正町の中心地です。商店街をゆっくり走っていたら、頭上に不思議なものが出現!「国鉄土佐大正駅」という看板です。数十年前にタイムスリップしたような気分になりました。地元の人に聞いたら、「〈国鉄〉の上に〈JR〉と書いた板を貼っちょったがやけんど(貼っていたんだけど)、いつの間にやら外れてね」とのんきな答えが返ってきました。

 何とものどかなこの町の名物は地酒です。明治26年創業の無手無冠(むてむか)。地元の栗をふんだんに使って仕込む焼酎で、全国的に知られています。蔵を訪ねると、会長の山本彰宏さんが出迎えてくれて、「うちは田舎の酒蔵じゃきのう」と語りはじめました。「地元にこだわらないかん。地元の役に立たないかん。四万十の米や栗を使い、四万十の水で仕込み、四万十の人に造ってもらう。それがうちんく(うち)の酒じゃ」

 栗焼酎の仕込みには、原料の半分以上も栗を使うという贅沢さ。古くから栗が名産品だった四万十だからこそ誕生した逸品です。酒の原料米については、地元の契約農家が農薬を使用しないで栽培しているのだとか。「四万十はもともと環境がえいろう。そのうえ、農薬を使わんと(使わないで)米を作りよったら、ホタルと赤とんぼがもっと増えだいた(増えだした)」と山本さんは笑います。

四万十の恵みがギュッと凝縮された酒と焼酎を買い込んで、個性ある酒蔵の町をあとにしました。

JR土佐大正駅JR土佐大正駅
国鉄の表記が残る看板国鉄の表記が残る看板
無手無冠 山本彰宏さん
山本彰宏さん

プロフィール

明治26年創業、無手無冠の4代目。1985年に栗焼酎を開発し、有名酒蔵に成長させた。「田舎の味がする酒、日本一泥臭い酒を造っちゃろうと思うちゅう(造ろうと思っている)」と語る。息子の勘介さんが5代目を継いで、ひと安心の日々。