高知の食は、つくる人が熱々。人熱々料理

「やいろ亭」の女将さんは、 鰹が美味しくないときは売らない。

鰹のたたきはもちろん、それ以外の料理も美味しい。けど、なによりも女将さんとかここのあったかい雰囲気が良くて、県外から来た人をもてなすときは、ぜったいここ。

常連さん

いとこが高知に住んでいて、高知に来たらいつも来てた。最近お酒が飲める年齢になり、お酒はここで飲もうと決めていた。

旅行客の方

隠れたオススメは「たたききゅうり」。なんかクセになる味で。

常連さん

噂のお店は、高知市中心部にある「ひろめ市場」のなかにある「やいろ亭 ひろめ店」。ひろめ市場といえば、高知城や帯屋町商店街からも歩いていける観光名所の1つでもあり、高知県民にも親しみのあるスポットで、よさこい祭りの時期など観光シーズンには、観光客と県民がごっちゃになって一緒に飲食などを楽しむ。まさにそんな高知グルメの強豪たちがせめぎ合っている場所で、「今日は鰹が美味しくないので売りません」なんて…一体どういうことなのか。
怪しんでいてもしょうがないので、お店の女将・嶋崎さんに直接聞いてみた!

嶋崎 恭子さん
「やいろ亭 ひろめ店」の名物女将。
明るく、気さくで、すこぶる元気!
常連さん、観光客、誰にでも分け隔てなく話しかけてくれる。
聞き手:池田
高知出身。取材経験のない、戦闘力ゼロのアラサー。好きなものはグミ。

──まずは取材交渉。女将さん…いらっしゃいますか?!

女将さん

んっ?(休憩中で軽食をもぐもぐ)

池田

あ、すみません・・・お食事中に。ちょっと取材をし――

女将さん

ごめんよ!食べながら聞くわ!なに?!(無理矢理飲み込む)

池田

いま、高知県の観光キャンペーンで『高知の食は、つくる人が熱い。人熱々料理』というキャッチコピーでやってま――

(ガタッ)

女将さん

ちょっと待って!うちんくもキャッチコピーあるで!

池田

(えっ)

女将さん

これー!えいろー!

池田

・・・か、かっこいいですね!
そういえば、お店のいろんなところに書いてあり――

女将さん

そうやろ!
お客さんに「はやく『勝手に』っていう文字をとりや!」って言われる。
ふふ・・・。ふふふ・・・。

池田

素敵なエピソードですね。
それぐらい、やいろ亭さんのタタキが美味しいってことでしょ――

女将さん

ほんで?なんで来たがやっけ?

──あ、はい。「今日の鰹はおいしくないき売りません」という日があるって本当ですか?

女将さん

うん。本当で。
日によって鰹の調子は違うきね。美味しくなかったら売れんき。

池田

こんなことを言ったら大変失礼ですが、高知といえば鰹。
ひろめ市場だけでも、鰹のタタキを提供するお店はたくさんあるので、正直、県外からの観光客の方にはあまりその差が分からないと思いますが・・・。

女将さん

そうやと思う。でも高知の人には分かるし、バレる
もともと地元の人に美味しいものを出したいという思いではじめたき、そこは変えられんがよね。

池田

今となっては、高知の観光名所の1つでもあるひろめ市場。
そんな中でも、やいろ亭さんが地元の人にも愛され続けているのはきっとその思いを貫いてきたからなんですね。

女将さん

うん。それに加えて、美味しいものを出さないと、生き残れなかったというのもある。今は観光客の人も多くなったけど、すこし前まではここも全然人がおらんかった。

池田

え?ひろめ市場に人がおらんことがあったんですか?

女将さん

知らんが?本当に人がおらんかったよ。
いまこの店から見えるお店はぜんぶ、ひろめ市場ができたときから変わっちゅう。残っちゅうのはうちだけ。それくらい大変やった。
それでも、ひろめはもともと高知の良さを『ひろめ』るためにできた場所やき、ずっと頑張ってきたがよ。

池田

まずは、高知県民に愛されようと。

女将さん

うん。

池田

「良い鰹を提供したい!」という思いはもちろん分かります。
ただ、何十年もその思いや頑張りを維持するのは難しいと思います。
実際、経営的にも難しい時期はありませんでしたか?

女将さん

もちろん!
完全に観光客向けなら、鰹のタタキは1回しか食べないだろうし(他のお店との違いなども)あまり分からないはずだから、多少割り切ることもできる。
でも、ふだん食べに来てくれる高知の人は、鰹に対する舌が肥えてるから絶対バレる。もともとは地元の人に美味しいモノを提供したいという思いで、店をはじめているので、板前さん含め、特に鰹にはこだわりゆう。

池田

こりゃあ、地元の人に愛されるわけですね。

女将さん

うん、本当にありがたいこと。

(お店が忙しそうになってきたので)

池田

急な突撃にも関わらず温かいご対応ありがとうございました!
常連さんにもちょっと話を聞きたいんですけど、いいですか?

女将さん

ちょーーーーーど!今日おるで!18時に来るで!
取材OKか、電話して聞いてみちゃお!

池田

おお!よかったです!ありが――

(すでに電話中)

女将さん

ねえ、今日来る人は取材かまんろうか?かまんでね?ありがとう!
(電話を切って)OKやって!またあとで来てみいや!

池田

は、はい!ありがとうございます!

(1時間後)お客さんにエピソードを伺いに再度来店。

(お客さんへの取材を終えて)

池田

女将さーん!お忙しいところ、すみません。
何枚かお写真を撮らせてほしいのですが…かまいませんか?

女将さん

うん!どんなのがえい?!

池田

ちょっと仕事を頑張っている風なのがほしいです。

女将さん

よっしゃ、ビール注ぎゆうところにしようか!

池田

(腕がかっちょいいな・・・。)

女将さん

これ(注いだビール)どうしようか!

池田

撮影用に入れてもらってすみません。ど、どうしましょう!?

(並んでいるお客さんにむかって)

女将さん

のど乾いちゅう人~?だれかこれ要る~?

──(取材陣、並んでいるお客さん一同、ぽかーん。)

女将さん

おらんね!よっしゃあ!(スタスタ)

(女将さん、ビールを片手に無言でスーッと移動)

(机にドンッ)

女将さん

あげるっ!

お客さん一同「「「んっ?!」」」

女将さん

あげる。

- 終 -

熱冷まし(取材後のつぶやき)

やいろ亭さんはカツオに対する思いが人一倍強いのかな、そんな第一印象がガラリと変わった取材でした。
カツオはあくまでも、やいろ亭さんのこだわりの1つ。
お客さんたちから「カツオ以外のおすすめメニュー」がばしばし挙がってくるのを見ると地元の人にも継続して利用してもらうために、他のメニューもこだわっているのが分かりました。

また、今回取材を受けてもらった女将さんだけでなく、板前さんやスタッフさんも、我々の急な取材に対して何事もないかのように対応しつつ、かつ、てきぱきとお客さんの注文等をこなしており、お店全体で熟練したおもてなしの雰囲気を感じました。

そして、取材中、やいろ亭の常連さんからも素敵なご対応が・・・!
「若いな~君ら。取材、大変やなあ。仕事中?ビールでも飲む?1杯おごっちゃおで!」と教科書に書いてそうな「高知人あるある」を、高知県民の我々に対しても気軽にしてくれました。

皆様、お忙しい&お楽しみ中にも関わらず、本当にありがとうございました。

\そんな高知の熱々な料理人に会いに来て欲しい/

やいろ亭 ひろめ店
住 所 高知県高知市帯屋町2丁目3-1
ひろめ市場内GoogleMap
電 話 088-871-3434
営業時間 11:30~22:00
定休日 無休
駐車場 -(ひろめ市場上のコインパーキングあり)

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